「農商工連携」の概念と目指すもの、およびその取り組みについてお伝えします。
地域の各事業者(1次・2次・3次産業)が、互いの強みを活かして、地域資源・経営資源を最大限に活用し、新たな商品・サービス、ビジネスモデルを作るために、業種を超えて連携する取り組みです。
農商工連携の促進は、地域と地域の事業者を活性化させる切り札として国の重要施策として位置づけられています。
平成19年度は、農林水産省・経済産業省が合同で全国の先進取組事例を「農商工連携88選」として公表され、東北地域の事例についても、東北経済産業局から「農商工連携取組事例集」として61事例が紹介されています。
そして平成20年度、両省の連携の下にこれまでの取り組みを更に強化した「農商工連携」を促進させるための関連法案も成立しました。法案に基づいた農商工等連携事例計画の認定により、全国各地で農商工連携による、地域の中小企業や第1次事業者の新たな取り組みが行われております。
参考「中小企業ビジネス支援サイトJ-Net21」(中小企業基盤整備機構)
農商工連携の促進は、地域の事業者が新たなビジネスを生み出すことで地域と共に発展し、活性化する切り札といえます。
現在、地域経済格差が拡大しており、特に地方では大企業が少なく、都市との経済格差が広がりつつあり、格差是正に向けた取り組みが必要と考えられているのです。
地方の基幹産業は農林水産業であり、地域経済の主要な担い手となっていると考えられます。特に東北地方では、全国に対する人口比は7.5%であるのに対し、第1次産業の域内総生産は全国比15.4%を占めています。(下図参照)農林水産業の活性化は、地域経済の活性化に大きな影響力を与えると考えられているのです。
実際、地方には優れた技術を持つ中小企業が存在しています。また、優れた品質の農林水産物を生産する事業者も存在しています。両者が強みを活かしあうことで、ビジネスチャンスの拡大や新商品・新事業展開の広がりが期待され、地域経済活性化の大きな可能性を秘めていると考えられるでしょう。
「農商工連携」の先進的な取組みをいくつか紹介します。連携が各業種(農・商・工・その他)の各事業者の経営にイノベーションを起こしています。
~異業種が強みを活かしあい、環境・健康・経済に貢献~
(農商工連携の詳細情報はこちら:平成20年3月 農商工連携取組事例集(東北経済産業局)を元に作成)
~米文化再興を目指し、米の特長を活かした日本酒を開発~
(農商工連携の詳細情報はこちら:平成20年3月 農商工連携取組事例集(東北経済産業局)を元に作成)
~無臭大豆の産地化・加工等で、地域農業活性化に貢献~
(農商工連携の詳細情報はこちら:平成20年3月 農商工連携取組事例集(東北経済産業局)を元に作成)
以上の事例で、異業種出身者(建設業・IT業界・銀行等)と農業との様々な形の連携により、新しい発想で自社へのイノベーションを起こしていることが確認できます。さらにその取組みによる、地域への波及効果が見て取れます。
主導する業種を問わず、企業と地域へのイノベーションにつながります。
東北の61事例を連携の主体別に見てみると、「農が主体=15事例」「商が主体=13事例」「工が主体=29事例」「その他が主体=4事例」となっています。つまり、どの業種の事業者から見ても、農商工が連携することで、様々なテーマを通じて様々なイノベーションが起きていると言えるでしょう。
「農商工連携」はどの業種の事業者の方でも行えますし、それによる自社へのイノベーションや地域への波及効果も期待できると考えられます。
また、東北地域の61事例を「農商工連携」のテーマ、連携によって実現したイノベーションで整理すると以下のようになります。
上図を見ると連携しやすいテーマもあり、活発に起こっているイノベーション領域もあると思われます。一概には申し上げられませんが、テーマとイノベーションの領域次第では、比較的取り組みやすい可能性もあるのではないでしょうか。
紹介した3つの事例を含め、調査の中で多くの成功事例となった事業者に感じた共通点が2点ありました。
「連携により事業が成功すれば、地域への雇用が生み出され、若者が地域に残ってくれるじゃないか。」とおっしゃる事業者の方が多く、そのような視点を持つ事業者の方の周囲には、同様の視点を持つ事業者・団体の方がいらっしゃるようでした。
先にも述べたように、連携している事業者のまわりには、同様な地域視点をお持ちの方がいらっしゃいます。その方々が連携して新しいものを生み出すプロデューサーとなる経営人財が必ず存在していることが特徴的でした。
先進的な取組事例を踏まえ、効果的なイノベーションをもたらすリーダーを育成します。
以上のように「農商工連携」は、(1)どの業種の事業者でも取り組める、(2)自社へのイノベーションも期待できる、(3)地域への波及効果も期待できる、ことであると思われます。各事業者にも地域にとってもメリットのある「農商工連携」を、積極的に活用してはどうでしょうか。また、その成功の鍵は、地域視点と他事業者を巻き込む力を持った経営人財の育成にあると考えます。